『仮面の告白』三島由紀夫
青春には血と汗が伴う。
たとえば自分の好きなものが他人とは違うおかしいものだったとしたら。逆に自分は皆が好きなものをどうしても好きになれないとしたら。私は諦めるだろうか。受け入れるだろうか。
そのままで生きていけるだろうか。あなたは?
ものにもよると言いたいところだろう。もしそれが、おかしいと言われるものが性的嗜好であったら? いまどきならLGBTなどと言われるものだろう。
あまり深く踏み込みたくはないが、個人的には、あくまで性的嗜好なのだから迷惑さえかけなければ他の人に文句を言われる筋合いはない、そしてそれを盾に弱者として意見するべきではないと思う。これ以上そんなことを言っては炎上してしまいそうだから控えておくが。
もし性的嗜好が人とは大きく違ったら、ということだ。細かな違いは一人ひとりにある。つまり世間一般的な人々は異性が好きで自分は同性が好きという、そういう大きな違いがあったら。
私はバイセクシュアルなためなんとも言えないが、大抵の人は社会からの疎外感を感じるだろう。
バイセクシュアルは「普通」に逃げることもできる。あれは偶然だったとも、異性を好きになることもあるという言葉で逃げることができる。社会に戻ることができる。
だが全く同性しか愛せないという人はどうなのか。今の社会では受け入れようという動きが多いけれど、受け入れられない人も一定数いる。それはまあ仕方がないとして。
自分がそういう少数者になったときどう生きるか。その葛藤がこの小説には綴られている。
その描写がひどく美しく芸術的で、そして限りなく文学的だ。
私の好む「表現を読む」読書に最適な本だと思う。ひとつひとつの情景描写が心情描写の役割も果たしており、ほんの些細なシーンさえも深読みすればすべてが繋がる。その深読みがまた面白い。
やはり自分ならではの解釈を進めていけるのが読書の良いところだ。三島由紀夫の本はいつも表現が美しい。そのどの表現にも解釈の余地があるのだ。
まだ『豊饒の海』を読めていないため、そろそろ読んでみたいと思っている。
それはそれとして、今度は恋愛小説やライトノベルも読んでみようか、というところである。